連載◎第23回本屋さんを作ろう 2010年05月21日更新

本屋さんをつくろう

4月に入ってからも大雪があったり、いつまでも冷え込みが続いたり、なかなか訪れてくれなかった今年の高原の春。
それでも、GW頃の初夏のようなお天気を境に、一気に速度は駆け足に。裸んぼうだった樹々の枝の先にぷくりと姿を表した芽は、翌日にはもう小さな葉を広げて、森は日に日に青みを増していきます。
草木たちも長いこと辛抱していたからか、今年の芽吹きはことのほか勢いが良いような...。
冬の間、あんなに待ちこがれていたはずの春なのに、いざ訪れると喜ぶ間もなくあっという間に季節に追い抜かれていってしまう。自然界のエネルギーには適いません。

始まりの季節。
私たちの週末カフェも5年目のシーズンに入りました。
そしてこの春、以前から温め続けてきた一つのプランがようやく形になり始めました。それは、森のなかに小さな古本屋さんを作ること。
母屋のカフェの隣に自作で建てた納屋のような小屋。物置となっていた3畳ほどの小さなスペースを片付け、ペンキを塗り、棚を造り、これまで少しずつ集めてきた古書を並べて、ひとまずめでたくオープン。
まだまだ本の数も種類も少なく、未熟な新米本屋ですが、少しずつゆっくりと、時間をかけて育てていきたいと思っています。

本

なぜ古本屋さんを作りたかったのか、と聞かれれば、(それはカフェを作ったときも同じことが言えるのですが、)「それが私たちにとって必要なものだったから(=欲しかったから)」というシンプルな答えしかありません。
以前、街に暮らしていた頃は、3日に一度は必ず本屋さん(新刊・古本問わず)を覗くことが習慣化していました。必ずしも何かを探しに行っている訳ではなく、本の匂いや手触りを楽しみ、活字の海にゆらゆら漂っているだけで、なんとも落ち着いた幸せな気分になれるのです。
この山の麓の小さな町に移り住むことを決められたのも、町にただ一つの本屋さん__それもとてもユニークな品揃えの!__が近くにあったから。
「地べたの本屋」を名乗り、地域性やローカル色を前面に出した品揃えが際立っていた「R」書店。やがて本が好きという共通項から親しい友人となる店長の女の子(実際、出会った当時はまだ20台半ば)のセレクトの基準は、ベストセラーかどうかよりも、「この場所で読みたくなるものかどうか」。そのため、並ぶ本の中身はかなり偏ったものだったかもしれませんが、行くたびに新しい発見や本との出会いが仕組まれていて、都会のなんでも揃う大型書店とは違った楽しみをたくさん味わわせてくれました。
その「R」書店も、じわじわと迫り来る書店不況の波には勝てず、惜しまれつつも2年前に閉店。いつでもぶらりと立ち寄れる本屋さんがない、ということは、スーパーや銀行がない!というのと同じくらい不便で寂しく、味気ないものです。

 

かつての「R」書店には、地元に暮らす人のほか、避暑に訪れる別荘客や、この森のなかに仕事場を持つ作家さんたちの姿などがありました。
場所柄、夏の間だけ長期滞在する人も多く、その人たちにとっては純粋に読書のための本選びや週刊誌などでの情報収集はもちろん、本を探しついでに店主とのちょっとした雑談を楽しみに寄ってみたりしているようでした。
そう。こうした地域に根ざした小さな書店は、その町の情報を収集し、そこから発信していくという役割も担っていたのです。
どれだけ本が簡単にインターネットで手に入っても、または今騒がれている電子書籍ですいすい本が読めるようになったとしても、「本」という商品を通じて"地域"と"人"を繋いでいくという本屋さんの役割は、消えて欲しくないし、消えないだろう、と思うのです。

「R」書店の意志を継いで.......なんて大それたことではないのですが、これからこの町で、活字に飢えたときのオアシスとして、そして地域における情報基地になれることを目指しながら、良質な本を揃えていきたい......。 皆さんも、リアルな森で「本の森」を遊んでみませんか!?

森

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