連載◎第19回湯治三昧。2010年02月02日更新

湯治三昧

「温泉」は、日本人にとって切っても切れない癒しの文化。古くから、戦のあとや農閑期には「湯治」と称して温泉地に長く滞在し、疲労回復や病気の治癒・予防を行ないました。

信州に暮らして嬉しいことは、車で30分も行けば必ず温泉に出会えること。土地によっては、銭湯がわりに毎日温泉を利用するという羨ましい話もよく聞きます。

春から秋にかけて、農作業と自営の商いを掛け持ちしてきた私たち。昔の人に倣って「湯治」の恩恵に肖っても罰は当たらないだろう、と都合良く解釈し、近頃はあちらこちら温泉のハシゴを楽しむ日々。

今なお元気に活動中の浅間山麓には、そのエネルギーを借りた、歴史ある良質なお湯がたくさんあります。

浅間山

小さい頃から、家族でよく出かけていたのが、群馬県側の鹿沢温泉にある「紅葉館」。東御市から湯ノ丸山、嬬恋村へと至る地蔵峠の道筋には、100体のお地蔵様が祭られていますが、その100番目の地蔵観音がこの「紅葉館」の脇に立っています。

山裾に建つひっそりとした一軒宿。昔はいくつかの旅館が建ち並ぶ温泉地だったそうですが、大正時代に大火があり、他の宿は少し離れた新鹿沢エリアに移ってしまったため、今ではポツンと一軒だけ。でもそれが逆に「秘湯感」を漂わせ、ノスタルジックな雰囲気を味わえる要因となっています。

建物はだいぶ古く、温泉までは付け足し付け足しされたような廊下や階段(歩くとキシキシ音がします)を辿って向かいます。山小屋のような造りの浴室は、5人も入ればいっぱいになるくらいの広さ。(伸び伸びした開放感を求める方にはお薦めできません!)光の加減によって薄いブルーにも見えるお湯。壁にはなぜか焚き火の周りで踊る人のレリーフが彫られています。ちょうど春に行った時には、高窓から桜の花が咲いているのが見えて、同行の母と「花見湯だねぇ」と喜んだこともありました。

お風呂上がり、ロビーで休憩していると、壁に「雪山讃歌」の歌詞が掛けられているのに気づきます。雪よ岩よ~♪で有名なあの歌はこの場所が発祥の地なのだそうです。その歌のとおり、冬は近隣の雪山を訪れるスキー客に、夏は登山客やハイカーに親しまれている良泉の宿。深々と静まり返るこの時期、そっと訪ねたいお気に入りの立ち寄り湯のひとつです。

●鹿沢温泉 湯本 紅葉館
http://www.kazawaonsen.com/

紅葉館

もう一軒、こちらも「秘湯感」では負けず劣らぬ山間の温泉。

浅間山の小諸側の登山口、標高1400mの場所にある「天狗温泉浅間山荘」では、全国でも有数の「鉄鉱泉」を体験できます。

それまであまり鉄鉱泉というものを知らずに出かけてみた私。初めて見たそのお湯の色にびっくりしました。浴槽のお湯全体が、赤に近い鮮やかなオレンジ色。手で掬っても真っ赤。浴槽の縁などに手をつけると、ゴシゴシ洗わなければ落ちないほど赤く染まります。落とし口から流れ出る源泉は無色透明なのですが、空気に触れると酸化して赤くなるのだそう。(できれば使い捨てられる手ぬぐいを持参することをお薦めします!)

視覚的にも楽しいお湯にじんわり浸かって、大きなガラス窓越しに広がるカラマツ林を眺める.....。日常の煩わしさも忘れてしまいそうな心地よさ。

お風呂上がりには、宿お手製の手打ち蕎麦や、山菜うどんなども頂けます。

本館の周りにはバンガローやコテージもあり、シーズン中は、この登山口を出発点に浅間や黒斑山を目指す登山客でさぞかし賑わいを見せることでしょう。オフシーズンのこの季節は、人影もなく、代わりに長い尾を振ったヤマドリが悠々と山道を横切っていきました。

●天狗温泉 浅間山荘
http://www.tenguspa.com/

浅間山荘

このほか、浅間山麓には、標高2000mからの眺望が自慢の「高峰温泉ランプの宿」や、登山電車で登る展望露天風呂がユニークな「菱野温泉常盤館」、日帰り立ち寄り湯として施設充実の「星野温泉トンボの湯」や「つつじの湯」(嬬恋村)などがあります。

温泉がひときわ身に沁みる冬ならでは。浅間山をぐるりと周遊する「湯治旅」に出かけてみるのも一興かと.....。

さあて、次はどの湯に入ろかなぁ。あははん♪

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