連載◎第12回故郷でアート。2009年9月11日更新
群馬県の中之条町で開かれている「中之条ビエンナーレ」というアートイベントに出かけてきました。
中之条町は私たちが暮らす長野原町や草津町のお隣にあり、普段は四万温泉などに立ち寄ることがあるくらいで、あとはのどかな農村というイメージしかありません。そんな場所で町ぐるみでのアートフェスと聞いても今ひとつピンと来なかったのですが、これが実際に足を運んでみると、なかなかどうして、見応えのある素晴らしい企画だったのです。

ビエンナーレという名にあるとおり、2年に一度のこのイベント。一昨年に続いて2回目の開催となるそうです。国内外から100人を越えるアーティストが集まり、商店街や温泉街、古い木造校舎や廃業した工場など、町内のいたるところに現代美術作品が展示されています。
まず訪れたのは、駅前商店街のエリア。
ここでは、数年前に廃業した木材会社や明治創業の蔵元、古い呉服屋を改築したギャラリーなどが展示の舞台となっています。

「中田木材」では、積まれたままの木材や無機質な什器たちの合間から顔を覗かせるカラフルなペイントやシュールなオブジェとの組み合わせが、なんともインパクトがありのっけから圧倒されます。展示スペースは、物置のような場所や路地の隙間などにも及ぶため、さらっと見ただけでは気づかずに通り過ぎてしまいそう。
でもそこは、ボランティアの町の方たちが親切にガイドしてくれます。(おじいちゃんたちが「オレにはアートはよくわかんねーだけども」と言いながら、それでも丁寧にニコニコと案内してくれる姿が微笑ましかった!)
時代を感じさせる「旧廣盛酒造」の広大な打ちっぱなしの空間では、迫力ある彫刻や写真のように繊細な絵画などが暗闇で存在感を放ち、まさにミュージアムそのもの。関係者の方によれば、アーティストたちはそれぞれの会場を見て回り、自分の展示にぴたっと来る場所を自ら選べるのだそうです。全体を通して感じた、場所と融合することで作品がさらなる魅力を発揮できる面白さというものは、そこから生まれてくるものだったのですね。

続いて里山の奥へと車を走らせると、大きな古びた木造校舎が現れます。ここは「伊参スタジオ」といって、映画「眠る男」(小栗康平監督)の撮影拠点として廃校を改築して建てられた建物。全国の映画ファンにも人気の高いこの場所も、期間中は展示会場のひとつに。教室や廊下、階段の踊り場などすべてが舞台となり、なかでも印象的だったのは校庭に“飛ぶ”鳥たちの姿。自然を生かしたなんとも面白い発想に感心してしまうばかり。(それはこの作品に限らずですが...。)
のどかな集落に点在する各スポットに立ち寄ったり(古民家や空き家、公民館などあらゆる場所が展示会場なのです)、四万の名所である「甌穴」など自然の風景に一息つきながら、四万温泉エリアに到着。


このエリア最大の見どころは「旧第三小学校」。一昨年まで実際に使われていた校舎には、子供たちの絵や自由研究の発表などがそのまま残され、先ほどの「伊参スタジオ」とはまたひと味違ったリアルな懐かしさとアートとの共演が楽しめます。スリッパを履いてパタパタと廊下を歩く感覚や、理科室や音楽室の独特な匂いなど、タイムスリップ気分であちらこちらを覗いていくと、あっと驚くような作品が待ち受けていて...。学校全体が大人のテーマパークのよう。「学校にまた活気が戻って嬉しいね。」地域の人の言葉が印象的でした。
そして、最後は四万温泉の立ち寄り湯でさっぱり!
この他にもまだまだ展示場所はありましたが(なんと町役場町長室まで開放されているのだとか!)とても一日では廻りきれません。
新鮮なアートの力が加わることで、見慣れた日常の風景がドラマチックに色を変え、町や暮らす人々の顔にも活気が戻る。
自然と、故郷と、アートと。作品を生み出す熱い手と、町ぐるみで繋がる温かい手と手を感じる、良質なイベントだと思います。
「中之条ビエンナーレ」は、9月23日(祝)まで。
長野方面からも、長野市や上田市からなら峠を越えて1時間半ほど。温泉やドライブの楽しみを兼ねて、ぜひお出かけください!
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著者紹介
藤野麻子
フリーライター&週末カフェ店主。

浅間山の麓、北軽井沢に暮らしながら、週末のみ自宅にてカフェ「本とコーヒー麦小舎」をオープン。
長野を中心に取材・執筆をちょこちょこと。麦小舎発リトルプレス「Forest & me.」の企画・編集に携わる。
www.mugikoya.com























