連載◎第9回樹上でお茶を。2009年7月28日更新

麦小舎の本棚

8月も半ば。夏休みも折り返し。
本当なら、海へ、山へ、太陽に誘われて飛び出していきたい季節ですが、今年はどうも重たい雲に覆われて、なかなかスカッと晴れてくれません。
夏らしい眩しいお天気はこのあと後半に期待するとして、こんな時期はじっくり本と向き合ってみるのはいかがでしょう?
今回は、ブックカフェの本棚から、この連載にちなんだ「森」をテーマにした本をご紹介。
家にいながら、ひんやりとした森の空気を感じていただけたら.....。

●森へ(たくさんのふしぎ傑作集)[福音館書店]

森へ(たくさんのふしぎ傑作集)

写真家・星野道夫氏の写真と文章で綴られるアラスカの深い森。
本文は子供用に優しく語られていますが、迫力ある写真の数々は、大人のための写真集としても十分に楽しめます。
人を寄せ付けない太古のままの原生林。熊の通り道、川をのぼるサケの大群、忘れ去られたトーテムポール、そして次の世代へと命を繋いだ倒木の姿。
そこに語られているのは、私たちの知る「森」とはまったく別の、深くて恐ろしいほどの真の意味での森の姿。
その光景に圧倒されながら、まるで自分が星野さんと一緒に森にわけいっていくような臨場感が味わえます。
お子さんと一緒にページをめくってほしい1冊です。

●森の「いろいろ事情がありまして」[信濃毎日新聞社]

森の「いろいろ事情がありまして」

軽井沢野鳥の森をベースに、自然環境の保護やエコツーリズム活動を行なう「ピッキオ」による森の生き物の紹介。
タイトルどおり、森は本当に様々な「事情」を抱えていることに驚かされます。
鳥にも、虫にも、花々にも、それぞれに、そこでさえずり、動き、花を咲かせる「ワケ」がきちんとあって、それらが見事に絡み合って「森」が形づくられている.....。
その一つ一つの「私生活」に目線を合わせれば、森とは単に木がたくさん生えているところなのではなく、人間界の「永田町」以上に“戦略”や“野望”が渦巻く、ドラマチックな舞台であることがわかって、より親しみと好奇心が湧いてきます。
本で基礎情報を仕入れたら、ぜひとも自分の目で確かめに「森」へ出かけてみたいものです。

●森の暮らし たいまぐら便り [アノニマ・スタジオ]

森の暮らし たいまぐら便り

「たいまぐら」とは岩手県北上山地の麓にある小さな集落の名前。アイヌ語で「森の奥に続く道」という意味なのだとか。
そんな山裾の森の中の小屋で、季節とともにゆったりとおおらかに暮らす著者ファミリーの生活の記録には、四季折々の自然を楽しむヒントがたくさん。
冬の厳しさは、ここ信州のそれとも近いものがあり、あちらこちらに共感できるフレーズが。なかでも、 「まだ夏は始まったばかりだというのに、私の心の中では、実際にはまだ気配すら感じられない秋が、もういすわっています。(中略)あぁ、もったいない、もったいない。一体何がもったいないのかわかないまま、夏の一日一日は過ぎていくのです。」
という一文を読んだ時には、毎年この時期に私も感じる焦燥感の理由を言い当ててもらったようで、膝を打ちました。
季節はまわり、同じ夏は二度と巡ってはきません。
そう思うと、この今ひとつパッとしない地味な夏も、また愛おしく思えてくるのです。

小学生の頃、夏休みのこの時期の憂鬱のタネは「読書感想文」でした。 本を読むことは好きだったけれど、いざ感想文を書けと言われると、上手に書かなければ、、ということに気がいってしまって、物語を純粋に楽しむことができなくなってしまうのです。 今思えば、上手になんて思わずに、思ったままを書いたら良かったのでしょうけど......。 さて、大人の皆さんは、この夏、何を読まれましたか?

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