連載◎第3回お寺でアート。2009年4月25日更新

薪を集めて。

 信州は、今まさに春爛漫。
 麗らかな陽射しのもと、ピークを過ぎた桜の花びらがはらはらと散り舞う好日に、小布施へと出かけてきました。玄照寺という禅寺で行なわれる「境内アート小布施」というイベントに、出張店舗として参加するためです。

 「境内アート小布施」は、その名の通り、お寺の境内を舞台に開かれるアートの祝祭。
 50年近く地元の人に親しまれてきた縁日「苗市」を母体とし5年前から始まった「境内アート」と、毎年秋に行なわれてきた「クラフトフェア」が合体し、総勢140組もの出展者が境内と、隣接するどんぐりの森広場に集まりました。
 会場は、アート・骨董・クラフトの3つのエリアに分かれ、各出展(出店)者たちがテントやテーブルを設え、思い思いのスタイルで作品をディスプレイ。 これだけの数が揃うと、その光景を眺めるだけでも圧巻です。

大きな牛のオブジェ

 ジャンルや表現スタイルに制約はなし。
 その場でお手製の「茶室」を組み立てた後に薄茶をふるまう人。大きなキャンバスに2日間かけて絵を描く人。 その横では、大きな牛のオブジェが置かれ、来場者が自由にペンキで着色することができて子供も大人も大はしゃぎ。寄席のような口上とともに、糸鋸を軽快に操って動物の形などに木片をカットする「糸鋸ショー」も人気を集めていました。

 山門や回廊、本堂までもがすべてオープン。
 はじめ、「当日まで出店場所は未定です」と言われ、どうしてかしらと戸惑ったのですが、到着してみてその訳がわかりました。ここでは、○×○メートル四方といった区切られたスペースは用意せず、境内という空間を自在に切り取って、その場所に流れる空気もろとも「表現する」ことを楽しんでもらいたい、という主催者側の計らいがあるのでした。
 境内という、ある種、閉じられた非日常の空間の持つ神秘性とも相まって、個々の作品の魅力はさらに輝きを放ちます。

出店の風景

 刻々と移る太陽の光線を受けて表情を変えたり、そよそよと吹く風に揺られたり、好奇心あふれる子供たちの手に直に触れられたり。そんな作品たちの姿を眺めるうちに、美術館のガラスケースの中でそっと息を潜めているものばかりが「アート」ではないということに気づかされました。
 「アート」とは、もっと私たちの日常に近いところに存在していて、それぞれが自由に感じ、楽しめばよいのだということ。
 さすがは日本が誇るアーティスト・葛飾北斎に愛された町。その深い懐のなかで、(出店側だということも忘れ!)のんびりと頭と心を解放できた2日間でした。

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